お題:「傷だらけの君は見ていられない」

【一キル】
「傷だらけの君は見ていられない」
https://shindanmaker.com/681121
↑お題元さまはこちらです。

一キルでございます。先に謝らせてください。ごめんね。
キルゲさんのおからだの一部が少し動かしづらい設定となっております。
んんん、自分の作文が若干の解釈違いです。つらい。
いつも読んでくださる方、これから読んでくださる方、ありがとうございます!よろしくお願い致しますm(_ _)m
突然始まって突然終わりますよう。ご注意を。濡れ場が全然濡れておりません。
──────

久々の休日。俺は彼とゆっくり過ごすと決めていた。
彼──キルゲの袖を、ちまりとつまんでみる。そのままちょいちょいと引くと、「ハイハイ、何ですか」とちょっと軽めな返事。続いて「いま包丁使ってるんですから、あちらでTVでも観ていてくださいね」とまるで小さなこどもを相手にしているかのようにやわらかくいなされる。
まな板の上をころころと転がる真っ赤に熟れた苺に嫉妬すらしてしまう。
そう、いま俺の恋びとは少し不器用な手付きで苺と戯れている。目の前に、というかすぐ横に俺がいるっていうのに。

「……俺だっていちごなのになぁ」

暗に「この扱いの差は何だ」とぼやいてはみるが、常ならば白手袋に守られている筈の骨ばった奇麗な指先は、件の赤い実にばかりご執心で、その涼し気な碧い視線もこちらをちらりと見ただけだ。それでも「Wie bitte?」とは言ってくれるし、俺という存在を傍に置くことを完全に許容してくれているのは確かだという安心感はあるのだが。
キッチンに少し寄りかかるようにして立つ彼の横で、その腰に緩く腕を回して支えた。そんな俺に少し笑んで、彼は作業を続ける。
とん。とん。と、苺たちが恋びとの手で両断される音が響いてくる。何だか落ち着くなぁと思わず目を閉じて、しじまの中の軽やかな音に耳を傾けた。
しばらく瞑目したまま意識をぼうっとさせていると、「おまたせしました」とやさしい声が聴こえてくる。ぱちりと目を開ければ、小さめのボウルに入った苺の山を渡された。それをリビングのローテーブルに持っていくと、冷蔵庫を覗いていた彼から、「練乳いりますよねー?」という台詞が飛んできた。
何だか、その何気ない言葉がとてもとても大切で、得難いもののように感じられ、俺は思わず部屋の中を駆けた……つもりだったがローテーブルの足に小指をぶつけて痛みに悶絶してしまい、練乳のチューブとデザートフォークを持ってきてくれた彼から心配とあきれを込めた視線を頂戴することとなった。彼は携えた瀟洒な白い杖に凭れて、「あちゃー」みたいな顔をしていた。
ふたりでソファに並んで腰掛ける。目の前には赤い小山。練乳。デザートフォーク。あとTVのリモコン。ソファのヘッドレストには彼の杖。そして雑誌類もテーブルの隅に几帳面に数冊積まれている。服飾関係の雑誌は意外にもほぼ彼のものだ。この生活になるまでは、滅却師は白しか身に着けないものだとばかり思っていたし、何より俺の横で嬉しそうに練乳を苺にドバドバかけている彼はその特徴を踏襲しているものだとぼんやり考えてもいた。でも彼はやる時はやるのだ、柄物に柄物を合わせるという荒技を。
クリーム色に染まっていく赤を眺めながら思考に沈んでいると、目の前にずいっとフォークに刺さった苺が差し出された。「どうぞ」という一言と共に。
それをぱくりと口に含んでもくもくと咀嚼する。練乳の強過ぎる甘さが去ったあと、苺特有の香りと甘酸っぱさが口内に広がる。

「美味しいですねぇ、このErdbeere」

同じように苺を口にした彼が微笑む。

「エ、エァ……なんだって?」

「おっと、失礼しました。こちらではstrawberry、否、いちご、と呼ぶのでしたね」

おそろい、ですね。
そう言うと彼は、練乳まみれの苺をもう一口含んで咀嚼し、嚥下してまた口を開いた。

「自分だっていちごなのに、という先程の発言の意味が分かりました。奇しくも貴方のお名前と響きが同じだ。ふふっ。非常に可愛らしいですねぇ。苺、いちご、一護さんっ」

気づくと俺は、ご機嫌に俺の名を呼ぶ彼を引き寄せ抱きしめていた。

「……可愛いのは、あんただ」

「私などに可愛らしさを求めないでいただきたい」

即座に憮然とした早口が間近で聴こえてくる。それがまた微笑ましくて、俺はふっと笑った。そして募る愛おしさに衝き動かされるように、彼をソファにやさしく横たえる。カランと彼の杖が床に落ちる音が響いて、彼は「こら」と苦笑気味に俺を窘めた。

「……昨夜も十分、その……シた?でしょう」

見た目の印象通りというかなんというか、やっぱり潔癖な彼はあまりこの行為に積極的ではない。ただ、俺の事を想ってか決定的な拒絶をされたことは、最初の一度目以降はほぼ無いと言って良い。その事実に調子づいて、俺は彼の口唇に口づけた。

「んぅ……っ」

途端に従順に受け入れる彼の口唇は練乳の甘みと苺の香りがした。美味い。
甘い下唇をべろりと舐め上げる。そうすればいつもの通り彼は薄っすらと控えめに口を開いてくれる。舌を絡めようと彼の口内を擽るが、これもいつも通りに舌は奥の方で縮こまっていた。それをやや無理矢理絡め取って愛撫する。唾液をこくりと嚥下するその健気な呼吸のはざまで、彼が鼻に抜けるような声を洩らした。

「ふぁ……ん、んん」

可愛いなぁ。ほんとに食っちまえそうだ。
とはいえ、彼のからだのことを慮れば、これ以上は控えておいた方が良いのだろう。
そう自制心を必死に働かせて、彼の口唇に啄むような口づけを一つ落としてから身を起こす。

「わりぃ、昼間から盛っちまった」

目元を赤らめてはくはくと懸命に呼吸する彼が、その碧い瞳に涙を湛えてじっとこちらを見上げてくる。かと思えばその視線をふっと外して、少し乱れていた前髪をしきりに手櫛で流す仕草をした。あぁ、照れているんだなと和みながら、寝転んだ彼を助け起こすために手を伸ばした。が、彼は軽く身を捩って俺の手を避けてしまう。俺は不思議に思った。何せ彼の左半身はあまり力が入らない。俺の向こう見ずな行動のせいで杖も無い今、彼ひとりで座り直すのはかなり骨が折れるはずだ。それなのに、と考えていると、「あのっ」と彼が上擦った声を上げた。

「ぃ、いちごが……食べたいのですが……」

「ん、おう。だから手ぇ貸すって」

「ありがとうございます……ではなくてですね……!」

わたわたと右手で何かを必死に否定しようとしている姿を見て、ピンときた。

「あのよ、俺の考えが合ってるなら、あんた言葉選びのセンスがオッサン過ぎるぜ……?」

さっきの台詞、洒落は洒落でも駄洒落のほうじゃね?
そう指摘すると、彼はボンッともともと赤かった顔を更に真っ赤に染めた。苺っぽい。

「聞かなかった事にしてくださいっ」

「それは無理だな。あんたからのアプローチ、結構レアだから忘れられねぇ」

「そんなぁ」と半べそになる彼を見て、このひと、意外と表情豊かなんだよなぁと嬉しい気持ちになる。なんと言うか、ふわふわとした感情が頭のてっぺんからつま先までを満たしてくれるような、そんな気持ちだ。……なんの説明にもなってないな。とにかく、俺は”あの時”の冷徹な表情しか見ていなかったから、この生活に入ってから彼について発見の日々だ。
俺にも滅却師の血が流れていると知った直後は衝撃が大きすぎたのか数日寝込んだ程だったが、何かに納得したのかその後はスイッチを切り替えたように彼は普っっ通に接してきた。流石に今のようにじゃれ合うような甘さは無かったが。  リハビリに励む彼を放っておけなくて、足繁く浦原さんのもとに通ったのは、未だに自分の中の最大の謎ではある。あの戦いで失われた生命は多過ぎる。生命を落とさなかったとしても、それぞれが傷を負い、今に至るまで苦しんでいるひとたちが居るのも確かだ。その中でも、明確に敵だった彼を見守り、今や身体すら重ねているのは何故なのか。その答えが掴めそうで、掴めない。

「だからよ、あんたが心ゆくまで、俺を味わってもらう」

「貴方こそ、中々な言葉選びですねぇ……」

アーモンド型の目を丸くして、彼が言う。そして「未だ十代ですよね?」と続いた。
おしゃべり好きな口唇を俺の口で塞ぎ、彼が纏う純白のブラウスの裾に手をかける。いつもはボウタイ?やらベルトやらで装飾がなされた衣服を好んで身に着けることが多いが、今日はシンプルめなものを選んでくれていたようだ。もしかして、こうなることを見越して……?と勝手な妄想がはたらく。が、基本的には行為の前後に必ず入浴する彼がそのような下心を出してくるだろうか、否ないなそれは、と即思い直した。
ブラウスの下から手を突っ込んでたくし上げ彼の身体のラインを撫で回す。変わらず今の自分にできるトレーニングを続けているようで、その骨太だがどこか華奢な印象を受ける肢体は美しい線を描いている。
あちこちに傷跡があるが、基本的には彼は色素の薄い身体の持ち主である。生々しく残る縫合の痕を見て、痛そうだという感想も生まれる。が、目は決して逸らさない。傷だらけのあんたは見ていられない、なんて一番言ってはならない言葉だと思っているから。
これらは、彼が戦い、生きた証だ。それを否定する権利も義務も俺にはない。

「相変わらず、きれいな身体だな」

本音をころりと溢してしまった。すると、彼はふっと悲しげで、それでいて皮肉っぽいような微妙な笑みを浮かべた。

「そのように仰るのは、貴方くらいですよ」

「俺以外にも、身体を見せたのかっ?」

半分本気、半分冗談で問うと、彼はころころと笑った。無邪気ともとれる笑みだった。

「お医者さま、ではないのでしたっけ。あの方、浦原さんには何度も診て頂きましたが」

あの方はいつも、こういった内容のお話はされませんよ?
くすくすと笑う彼に、苦笑いで返す。そうだ、あの人には見られているのだった。しかも彼とのこの関係も黙認してもらっている立場なのだ。忘れていたわけではないが、なんかこう油断していた。

「そう言えばそうだったなぁ……っと、続き続き」

愛しいひとの身体を改めて直に見、俺はごくりと喉を鳴らす。
柔らかいシルクブラウスを鎖骨の辺りで押さえ、彼は視線を彷徨わせた。自分で言うのもなんだが、まだ若い俺は既にほんのり兆し始めている。そんな俺の明け透けな反応に戸惑う彼は非常に愛らしい。この年まで(実年齢は見た目の比ではないそうだが)純潔を守ってこられたのは、彼本人の芯の強さも手伝ってのことではあるだろう。しかし、彼を取り巻く環境の中でこの初さを保っていられたのは、恐らくだが、涙ぐましい努力で彼を守ろうとしてくれたひとたちが居たからだ、と俺は思っている。
そのように感謝はすれど、あくまで彼の身体をまさぐる手は止めない。臍の辺りを擽り、肋骨が納まっているであろう細い線を撫で上げ、薄桃色のふちに口付けを施す。ひくりと肩をすくめる彼を上目遣いに見守りながら、今度は微かに主張し始めた胸の突起に舌を這わせる。ふにふにと舌で押せば、そこは次第に凝ってくる。右手で彼の左側を愛撫すると、それを見下ろしていた彼が言う。

「ぁ、そちらは……あまり分からないのですよ……?」

「俺が触りてぇんだ、あんたのぜんぶに」

素直な気持ちを吐露する。と。

「……貴方がそう思ってくださるのなら、いくらでも、お気に召すままに」

祈るように目を閉じ、吐息混じりにそう言ってくれる。それが嬉しくて、俺は伸び上がって彼の額に口付けた。「くすぐったいです」と子どもみたいに首をすくめる仕草もすごく愛おしい。
真っ白なフレアパンツの上から彼の中心に触れてみる。天使みたいな格好してんな、と思いながらこしこしと少しだけさすると、彼が悩ましげな声を洩らした。

「んっ……もっと近く、触れてはくださいませんか……?」

おう、とひとつ頷いて、しばし沈黙。脱がし方が分からないと率直に伝える。すると彼は照れたように慌てた様子で「失礼しました……っ」と自分から脱ごうとしてくれたので、あぁ、普通にそうするのか、と彼の腰を軽く浮かせてあげながら待った。
勢い余ってか、下着まで一息に下ろしてしまったらしく、彼は「あっ!ち、ちがいますっ。このようなはしたないこと……」とあたふたしている。
もう本当に、なんて可憐できれいで可愛いひとなんだと頭を抱えたくなる。このひとに手を出さないまま守ってくれた先人たちに再度感謝して、俺は外気にさらされてふるりと震える彼の中心に触れた。

「ひゃ……ッ」

こわれ物にでも触れるようにそっと扱きながら、深く口付けをする。舌を絡ませ、吸いつき、やさしく歯を立てれば、彼はとろけた声を聴かせてくれる。
後ろ髪を引かれる思いで一度口唇を離す。伝い落ちた銀糸を指の腹で拭って舐め取りながら、ソファの収納に手を伸ばす。そこからこういう時用の予備のローションを取り出して、カチリと蓋を開けた。手のひらに粘性の高い液体を落とす。ボトルをテーブルに置き、冷たい液体を人肌温度まで温め、彼を見下ろせば、彼はその右脚をソファの背凭れに寄せスペースをつくった。来てください、のサインだ。いつの間にか脱いでいたらしいブラウスが彼の腰の辺りに敷かれていて、息合ってんな俺ら、と嬉しくなった。
俺は頷くと彼の脚の間に身を置いて、力無くソファに投げ出されている彼の左脚を無理のない程度に持ち上げる。そして、彼の後孔のふちをくるりと撫でてみた。ローションの滑りを借りて、なめらかに円を描けば、ソコはひくっと物欲しげに収縮する。素直でよろしい。などと高慢にも考えながら、中指の第一関節を挿し入れた。

「ふ、ぅあッ!」

「痛かったり苦しかったりしたら言ってくれよ?」

言いながら内壁にローションを塗り込むように指を蠢かせる。

「はぃ……、ッん」

「あんたのそういうとこ……なんか、好きだな」

挿し入れた指の本数を増やしながら言い、視線を上げると、きょとんとした表情でこちらを見つめる彼と視線が絡む。

「光栄です……が、突然なぜ?どこが?」

「なんていうのかな、そうやって律儀に返事してくれるっていうか、真正面から向き合ってくれるだろ?」

“あの時”もそうだった。

「俺の周りの大人の人たちって、秘密主義?ってーの?まあそこまでは行かなくても、語ってくれる機会が少なくてよ。だからかな、あんたみたいな大人、安心するし傍に居てほしいと思っちまう。これって俺の我儘だよな。こんなガキに世界とか崩玉とかの秘密、早々話せねぇわな」

「……貴方の周囲の方々は、貴方が心配で大切だから語らないのではありませんか。私はもともと貴方の敵だった。だからこそ必要とあらば語ったし、語る必要がある情報かどうか取捨選択していた。私は狡い大人なのですよ……?」

「そういうとこ!なんだかんだ言いつつ正面から赤裸々に話してくれる。やっぱ好きだ……!」

彼がなにか言おうとしてか口を開きかけた折に、彼の弱点をトン、とノックしてしまった。薄く開いた彼の口から、ひっくり返ったような嬌声が上がった。そして。

「あっ、一護さ、ん……も、わたし……だいじょぶですから……っ」

「来て」と言われたら。俺は、俺は……!

「無理はすんな……って今からさんざ無理させるんだよな」

すまねぇ……!
そう言いながら彼の後孔に挿入している指を可能な限りゆっくり引き抜いて、自分の中心に残りのローションを塗りつけた。かなり柔らかくなったソコに自身を充てがえば、ちゅっと口付けのような音を立てたのを聴いて、堪らない気持ちになる。

「分かるか……?あんたのソコと俺のココ、キスしてる。あんたはこんなトコまで可愛いんだなぁ」

「ん、あまりいじわる言わないでくださぃ……っ」

右手で目元を隠そうとするのを軽く止めながら、じっくり時間をかけて、彼の胎内に俺の中心を埋めていく。
一度失われて浦原さんの謎技術で回復したソコは、どう見ても、どう触れても、本物と変わらない。だが、やっぱり無理はさせてはいけないと俺は思っている。本人もあの人も「大丈夫」とは言うが、俺の気持ち的な問題だ。
とはいえ、俺にも理性と、その限界は有るもので。

「わるいが、そろそろ動いてもいいか……?」

「えぇ。今日は、いつもより……無理させてください」

「なっ」

彼が、いたずらが成功した子どものように笑った。そしてすぐ申し訳無さそうに眉根を寄せ、訥々と語った。

「貴方はいつも私の心身をいたわってくださる。しかしその代わり私は貴方に我慢を強いていた……そうでしょう?」

「ですから」そうして一呼吸おいて彼は続ける。

「今日から貴方も、無理はしないでください」

そう言うと彼は右脚を俺の腰に回し、引いた。
ずぶりと、奥に這入り込む感覚。
これまでは確かに浅めの位置で抽挿を繰り返していた。彼にあまり無理をさせず、且つ気持ちよくなってもらうにはこれで十分だ、と満足していた。心の方は。だが、彼は気づいていたのだ、俺の莫迦な体が若干のもどかしさを感じていたことに。
もう、お伺いを立てる必要は無かった。それは慎ましい彼の、決死のお願いを無下にする行為だからだ。
俺は一旦腰を引いて、思い切り打ちつけた。くぐもった嬌声を上げる彼を見て、ぞくぞくっと背筋を駆け上る感覚は、今までにない快感だった。俺の中心をすべて飲み込んでくれた彼の後孔の熱さに充てられ、俺の理性の糸はあっという間に焼き切れた。何度も何度も、最奥を狙って腰を打ちつける。

「あ、あ、ぁあ!、あ……いち、一護さん、ん、きもちいいですか……ッ?」

「あぁ……!ビビっちまうくらいにな。あんたは?」

「よ、よかっ、った。わたし、も……んぁ、あ、きもちいいですッ」

一生懸命に紡がれる言葉に、何故か泣きそうになりながら、俺は絶頂を目指した。勿論、彼の手を引きながら、だ。彼のペースを見つつ、自分も突き進んでいく。

「も、さきに……ん、イってもいい、ですか」

「俺も、今日はちょっと、我慢できそうにねぇ」

「いっしょに、イける……のですね」

「おう。いっしょ、だ」

俺の返事に、彼は涙をはらはらとこぼして、目元をしきりにこすった。時々無意識でなされる、彼のこういう子どものような仕草にもドキッとする。
抽挿のペースを上げる。言葉を編む余裕もなくなったのか、ひっきりなしに甘い声が上がり続けた。その声をBGMに、俺も加速度的に昂ぶっていった。

「あ、んん!ひぁん、っも、や……あ、ぁ、あああ────ッ!!」

「く、ぅう!」

うねる彼の胎内の蠢きに誘われるように、俺は吐精した。びゅーびゅーと吐き出される白濁を最奥で受け止めて、彼は弓形に背をしならせ白い喉元をさらした。その反応だけでもう二発くらいイケると思ったが、今日はかなりの無理した自覚があるので自重した。刹那。

「我慢はしないでと、申し上げましたよねぇ」

「あ、だけど、その……キルゲ?」

「空っぽになるまで、離しませんから」

乱れた前髪を横に流しながら、にっこり、と花が咲くように微笑んだ彼に見惚れていたら、ガシッと右脚で腰をホールドされてしまった。
今日は久々の休日だった。俺は彼とゆったり過ごすと決めていた。……そうはいかなかった。
少ししんなりした苺を、ふたりで「あーん」し合うのは、とっぷりと日が暮れてからだった。

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