お題:この花が枯れたとき、

ソルクロへのお題は『この花が枯れたとき、』です。

「この恋は絶対に実らないって分かってるから、こんなの作ってみたんだ」
クロウの手に握られているのは、金属片を寄せ集めて、針金に結わえてできた花のようなもの。
説明によれば、この花が枯れたとき、つまりは花弁が全て落ちたとき、ヤツの恋は終わるのだそうだ。意味がわからない。
「この想いに振り回されるの、もううんざりなんだよね。でもそのまま諦めるなんてムカつくし。だから僕は自分に術をかけたんだ。タイムリミットがあれば、思い切れるんじゃないかと思ってさ。これから僕は君に猛アタックを仕掛ける。なんの気兼ねもなく、したいようにさせてもらう」
花もどきを振り振り、オーバーアクション気味に説明を続けるクロウ。シカトして帰ろうかと考えるソルだったが、せっかく見つけた支部を破壊せずじまいは癪な気がして踏み止まる。
「別に今まで通り冷たくあしらってくれても良いよ。こっちはそんなの気にしてられないくらいに焦ってるからね。君がどこに逃げようと見つけ出してデートに持ち込むし、僕を殺そうとするなら喜んで君を抱擁する」
…殺されるのかァ、死ぬのは嫌だけど君相手ならそれも魅力的だなァ。うっとりと笑うクロウをソルは封炎剣片手に睨む。
「花弁は全部で六枚。一枚二十四時間もつ。日を追うごとに散っていって、一週間後にはきれいさっぱりこの思いは忘れられるってわけ。あぁ、無理矢理毟ってもいいけど、そうすると…まぁ別に今はいいや。と言うわけだから早速だけど、ソル」
別に良くないから説明しろ、とソルが言う前にクロウが目の前から消えた。
何事だと見回せば、ソルのすぐ隣にクロウは立っていた。いつものように人を食ったようなにやにや笑いを浮かべている。
クロウの移動を勘付くことが出来ず、ソルに焦りが生まれた。その隙を狙いすましていたように、クロウはソルに手を伸ばし。
彼の手を、きゅっと握りしめた。
「…!!」
「わぁ、ソルの手ってやっぱり大きいんだねェ! 」
歓声をあげるクロウを見て、ソルは瞠目し、ぴたりと動きを止めた。
ソルの反応などお構い無しでクロウはソルの手のひらを両手で掴み、ぎゅむぎゅむと力を込めたり両者の手を比べるように合わせたりした。
「すごいなァ…剣を持つから手のひらも指も分厚い。本当はグローブ無しで触ってみたいけど、それはまだ…時期尚早だよね。……あは、ソルと手を繋いじゃった」
噛みしめるようにそう言って、クロウはソルを見上げにっこりと笑んだ。急に目を合わされて、ソルはハッと我に返る。
「…離れろ」
「ふふふ、そう言うと思った。オーケー。ただ、ちょっと待ってね」
そう言うとクロウは手を下向きにして、ソルの指と自分の指を絡めた。いわゆる恋人繋ぎと言うやつだ。振り解くのも忘れて、ソルは自分の手を見下ろす。
「ロボー!ちょっと来て!」
「何ダ駄目博士」
ロボカイがひょっこりと扉から顔を出す。その声音は、機械音声だというのにいかにも面倒くさくて堪らないというのが分かるものだった。自分の使役するロボットの小生意気な態度にはもう慣れっこなのか、クロウは気にする風もなくロボカイに命じた。
「この光景を見て!」
「大ノ男ガ揃イモ揃ッテ…きもいゾ2人共」
「そんな事はいいから、この姿を記録しておいてくれ」
「言ワレンデモ、ワシノめもりニ焼キ付イテ離レンワ」
物凄くげんなりとロボカイは項垂れる。
「それは良かった。ソル、ご協力ありがとう。今日はこの映像を眺めながら悦に浸って過ごすとする。あと、この建物は既に用済みだから壊してくれてもいいよ。君を誘き出すために態と結界を解いたんだ」
その言葉を聞いて、ソルは封炎剣を握る手にギリリと力を込めた。背景にはメラメラと炎が渦巻いている。
「…潰す」
「ふふ、怒った顔も格好いいなァ…」
「ッ何ヲボヤボヤシテオル、駄目博士! 撤退ダ!!」
憤怒の表情に見入るクロウをロボカイが抱き上げて叫ぶ。そのまま出口へとダッシュするロボカイの肩の上でクロウはソルに向けてひらりと手を振った。
「じゃあね、ソル。また明日」
そう言った直後、クロウの持つ鉄製の花から花弁が一枚落ちた。
残りはあと5枚。

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