お題:手間のかかる子ほど可愛い

ロボクロへのお題は『手間のかかる子ほど可愛い』です。
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「………マタカ」
任務から三日ぶりに帰還したワシを出迎えたのは、研究室前の廊下にうつ伏せに倒れている駄目博士だった。
以前は見つけるたびに胸のエンジンが弾けそうになったものだが、今ではもう慣れてしまった。それでも一応スキャンして、バイタルを確認する。
……大丈夫、ちゃんと生きている。
そうして一つ、溜息をつく機能を使うと、博士がいつも着ている無駄に重くて分厚い作業着を苦労して脱がし、放り投げる。洗濯は後回しだ。薄着になった博士を抱き上げて、仮眠室へ向かおうとしたが、
「お風呂……」
と博士が寝言のように(と言うかほぼ寝言だ)口にするものだから、方向転換を余儀なくされてしまう。博士は駄目人間だが、風呂に入らぬままベッドに入ることは良しとしない。そのため、大変面倒だが風呂にいれてやらなければ後で何をされるかわからない。全身から力の抜けている大の男を風呂に入れることの大変さを、博士は絶対に理解していないだろう。
風呂場に着くと、床に一旦博士を下ろし服を脱がしてやる。どこに視線をやったらいいのかいつも通り迷いつつ、何も纏っていない駄目博士を抱え直してシャワー室に入る。ちなみに、風呂釜は以前博士が湯船で眠りこけたので全て撤去された。
ボディソープをスポンジでこれでもかと言うほど泡立て、くったりとこちらに身をあずけている博士を洗う。全身まっしろなふわふわに包まれた博士に、人肌温度に調節したお湯をかけてやる。心地良い温度だったのか、博士が微笑む気配がした。その瞬間に感じたエンジンの疼きに気づかぬふりをして、作業を続ける。化粧は、お湯を顔にかける訳にもいかないので、濡れタオルでやさしめに拭ってやった。
シャワー室から出て脱衣所に移る。もっふもふのバスタオルで博士をくるんで抱き上げて、今度こそ仮眠室へと向かう。
ろくにメイキングされていないくしゃくしゃなベッドの上に、博士を寝かせる。安心しきった隙だらけな寝顔を見て、デコピンの一つでもしてやりたくなった。実際は、人差し指で博士の額を軽くつつくに落ち着いたが。すると、博士が薄っすらと目を開いた。しまった、起こしてしまったかと焦っていると、ゆっくりとこちらに目線をやった博士が不意にへにゃりと微笑った。
「おかえりなさぃ、ロボ…」
そのまま寝入ってしまったらしい、規則正しい寝息だけが静かに響く。否、ワシのエンジンの駆動音がうるさい程に高鳴っている。このままでは博士が目覚めてしまうのではないかと思うほどだ。
このままここに居てはいけない気がして、急いで仮眠室をあとにする。扉を極力静かに閉め、背中をあずけるとずるずるとその場にへたり込んだ。
「何ナノダ…コレハ」
自分の胸に拳をあてる。先程感じたエンジンの疼きは、今では感じるはずの無い痛みとなってワシを苛み、しばらくそこから動く事ができなかった。

駄目博士のお世話を焼くロボを書きたかったのですが、着地点を見失ってしまいました。

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