鍵っ子ホムンクルスと元魔斧とかいう濃い夫婦、最高です

なんかいろんな設定が中途半端です。竜頭蛇尾ってこういうのを言うんでしょうか……(´・ω・`)

勢いで書いたのでおかしなところはフルスルーしていただければ幸いです。
やまもおちもいみもありませぬ。ごめんなさい。

アバパラ最高!

R18ご注意です。

──────

今日も今日とて、監禁日和。
鎖に繋がれ、夫婦の真似事。

「はい、あなた……あーんして……」

「……あーん」

よく判らないゲテモノ料理にも慣れた。見た目はアレでも、何故か食べられる味に仕上げてくるあたり、この自称妻──アバは案外料理上手なのかもしれない。だからといってこの状況を受け入れるつもりは無いが。

「あのぉ……そろそろこの鎖、」

「今日もいっぱい食べてくれて、ありがとう。最後にデザートをどうぞ……」

「はい……」

別にまくし立てるような話し方ではないというかむしろその逆なのに、いつもペースを奪われてしまうのは何故だろうか。
そしてこの毎食後に出される甘味、普段ならば紫や緑の見るからに食物ではないモノなのだが、今日は何やら勝手が違った。
淡い黄色の円錐台の上に焦げ茶色の薄い層が乗っている。皿を持ったアバがこちらへと歩みを進めるたびにふるふると揺れるソレは、なんというかマトモだと思った。人間の食事など微塵も興味がなかったが、これは抵抗なく食べられそうだ(などと考えている時点で、相当毒されているのではないだろうか、という考えは見て見ぬふりをした)。
私の横に侍ったアバが、スプーンで掬ったそれを口元に持ってくる。

「はい……あーん」

「あー、ん」

ぱくり、と口に含んだそれは、妙に甘ったるかった。よく分からないが、人工的に造った甘みとでもいうべきか、とにかく舌にじわりと痛みをもたらす暴力的なまでの甘さだった。この時、己が今や石斧ではない生身の体であることを思い出すべきだった。だが、さては材料の分量を間違えたか、と呑気に考えながらその怪しすぎる甘味を飲み下してしまった。刹那。
どくりと、身体全体が脈打つような感覚に襲われた。次いで激しい嘔吐感。眼の前の光景は歪み、平衡感覚が役に立たなくなる。座っていることすらできなくなり、その場に倒れ込んだ。おそらくこの変調の原因であるアバの姿を視界の中に探す。この時初めて自分が涙をぼろぼろと溢していることに気づいた。
濡れた視界の端で特徴的な翠の瞳が私を見つめている。

「き、きさま……! 何を、」

「大丈夫よ、パラケルス……すぐ楽になるはず」

こちらを安心させようとしてか、言いながら背を撫でられる。その触れた部分から痺れるような感覚が走り思わず身を捩った。

「ぁ……、くぅう!」

背を丸めて悶絶する私の横で、アバが懐から何かを取り出した。
「あれぇ?」だの「分量、合ってるよね……」だのという不穏なひとり言がぼそぼそと聴こえてくる。次から次へと目からあふれて止まらない水分を拭い目を凝らすと、アバの手の中にある小瓶が見えた。

「なん、だソレは……!」

「あっ」とマズそうな顔で後ろ手に隠されたソレを今可能な限りの渾身の力で奪い取る。涙で烟る中に『媚薬だよ♡』という文字が見て取れて反射的に床に叩きつけた。

「ひ、ひどいわぁ……!」

「非道いのはきさまの方だろうが!!……! 何をしている!」

リノリウムの床に広がった無色透明のとろりとした液体を、あろうことかアバは床に顔をつけてぺろりと舐め取ったのだ。

「ん……甘ぁい……でも、あんまり、おいしくない。……そ、それにこの感覚は……まさに、超、弩級……!!」

「そのようなモノを食べさせたんですね、私に!」

「だ、だってぇ……あなたが中々身体を許してくれないからぁ」

先程の私と同じようにぼろぼろと泣くアバが、それでも言い募る。

「『これで意中の男性を虜にできるよ♡』って書いてあったの……それで思わず……」

「……はぁ」

溜息しか出ない。
いくらか楽になってきた身体に内心でホッとしつつ身を起こす。

「それで、どうなさるつもりなんです?」

「あ、れ? おかしい……説明書にはこの辺りに紋章が出るって……」

「紋章ぉ?」

自らの下腹部を見ながら言うアバを訝しげに眺める。その時、無意識に私は自分のへその下あたりを撫でた。撫でてしまった。

「ひゃぅッ!?!」

「えっ?」

まさか、と思いつつも恐る恐る衣服に手をかける。ええい儘よとばかりに捲りあげると、私の下腹には目に痛いピンク色の怪しげな紋章が確かに浮かび上がっているのだった。
骨盤の内側に合わせるように描かれた紋章を見て、アバが瞳を輝かせる。

「この位置……形状……やったわ! おめでとう、あなたぁ……!」

「な、なにが、ですか?」

答えは何となく分かってはいたが、訊かずにはいられない。

「これであなたも赤ちゃんが産める、みたいね……」

想像したよりもやばそうな内容の台詞が返ってきて「ひぇ……っ」と情けない声を上げてしまった。
否、でも待て。人間同士の殖え方など風のうわさに聞く程度だが、私は生物学上雄であり性自認もそれに倣っている。そして目の前で私をきらきらとした瞳で見つめているアバは雌であるはず。
赤子は雌が宿すもの。それくらいの常識は持っているつもりだ。だからアバの言葉は誤りだと思った。

「私は雄ですよ? もし子を望むにしても私の身体にはそのような機能は、ありません」

「だから今作ったのよ……その、機能を。ほら、この説明書のここに書いてあるわ。……アタシも今初めてしっかり読んだけど……」

聞き捨てならない言葉を呟きながら、先程私が叩き割った小瓶に貼り付いていた説明書きを、アバが指先で拾い上げる。そこには確かにいくつかこの状況を説明する文が並んでいた。
私の体内に一時的に形成された臓器について。そしてその臓器を約十ヶ月持続させる方法(悍ましくて途中で読み飛ばした)。また、雌がこの薬品を摂取した際に起こる身体的な変化について。
最後の一文を読んで反射的にアバを見ると、頬を赤らめながらもじもじとスカートの端を握りしめている。その細い手首を引っ掴んでスカートの中を見る、と同時に私は石化したかのように固まってしまう。

は、生えてる。

かろうじて脳内からこぼれ落ち言葉になるはずだった音は、音を成さずに口を動かすだけに留まった。というか、私のより大きい気がする……!
アバの下半身の『ソコ』を思わず注視してしまっていると、彼女がくねりと身を捩る。

「そ、そんなに見つめられると……いくらあなたでも照れてしまうわ」

「もっと早い段階でその羞恥心を発揮してくだされば、このような事態にはならなかったでしょうに……!」

「ふふ、あなたも照れているのね……かわいい」

そう言いながら押し倒そうとしてくるアバと、力比べのような態勢で格闘する。やや劣勢、というかほぼ背は床についているのだが、それでも負けるわけにはいかない。私には魔斧としての矜持が、戦場の死神としてのなけなしの意地がある!
ぐぐっと腕に力を込めると、アバが苦しげに呻いた。その時なぜか咄嗟に力を抜いてしまった。そのまま押し返してしまえばよかったにもかかわらず。
私を間近で見下ろしながら嬉しそうに微笑むアバ。

「やっぱり……やさしいのね」

「卑怯だぞっ」

「ごめんなさい……でも、どうしてもあなたと繋がりたくて……」

「言い訳は要らぬ! 離……っんんんぅ!」

口唇を重ねられて、言葉さえ奪われる。その屈辱に不本意な涙がまたじわりと滲んだ。
ちゅっちゅっと音を立てて口唇を何度も啄まれ、そのくすぐったさに脱力した拍子だった。アバがさっと身を起こし、自らの体を私の上から退かした。
もしかして気が変わったのだろうか……などという安堵はほんの一瞬で、膝裏と背に違和感。ひょいっと軽い音がしそうなほど容易く、アバに抱き上げられたのだと気付くのに数瞬を要した。
流石は魔斧であった私を振るっていただけあって、揺るぎない腕でアバは私を寝台まで運び、まるでほんとうに大切なものを扱うような手付きで私を横たえさせた。
そしてひらりと身軽に私の上に跨がってくる。その動作には一切の無駄がない。捕食する側に回ったアバは、惚れ惚れするほど身のこなしが華麗だった。戦いの最中に時折垣間見る才能を、なにもこのタイミングで最大限発揮しなくても……と思う。
そう現実逃避している間に、アバはまた口付けてくる。何度も何度も角度を変えて、また、顔中に口付けの雨を降らせてくるため、そのこそばゆさに首を竦ませた。そんな私を微笑ましそう(という表現でいいのだろうか)な表情で見下ろすアバの目には明らかな欲の色が見えた。愛玩と性欲。その感情が一緒くたになって、アバの瞳をぐるぐると彩っている。
正気じゃない。そんな感想さえ抱くが、アバは私の耳元に顔を寄せ、真剣そのものといった声音で囁くのだ。

「愛しているわ、パラケルス」

だから私は『パラケルス』ではないと言うに、普段ならそう言い返していただろう。だが今の私も、というより私の身体も正常ではなかった。『名』を呼ばれた途端、きゅぅんと甘く疼いたのだ、あの紋章が描かれた下腹が。そして体全体がカッと熱くなる。その後下腹の紋章を中心として、耐え難い熱が燻り続けているような感覚に支配された。
頭の中では警鐘が鳴り続けているのに、肉体だけが暴走しているようにすら錯覚してしまう。どうにかしてこの熱を治めなければ、いずれ自分はおかしくなりそうだ。現に私の中で、本当に認めたくないのだが、「犯されたい」という考えが頭を擡げ始めている。そんなこと、あってたまるか。薬の効果が切れるまで、なんとかアバから逃げ切りたい。それなのに。

「アバ……あつい。あついのだ……」

意に反して己の口からまろびでたのは、この先に起こる何かを浅ましくも期待して強請るような声音と台詞だった。
自分の変化に絶望を隠せずにいると、アバがこちらの頬をやさしく撫であげた。その微かな刺激にもふるっと身震いしてしまった。

「ふふふ……安心して、パラケルス。これから気持ちよくなれるはずだから」

「き、きもち……よく……?」

「うん。ふたりでがんばって赤ちゃんをつくりましょう」

ぼうっとしだした頭にアバの言葉が木霊する。意味もよくわからないままにただ鸚鵡返しする。

「あかちゃん……つくるのですか」

「あなたの、ココでね」

紋章を指先でなぞられるだけで、頭がとろけだす。

「は、ぁんん……」

戦場に立っているときの高揚感に近いが、何かが決定的に違う。
ただ、この昂りに流されてしまえば自分の求める快楽の局地に至ることを経験で知っている。他者の血液で刃を潤し、肉と骨を切り刻む感触。それこそが私という呪われた存在に許された唯一の悦楽だった。
今の私には血に濡れた刃はない。代わりに人造の肉体だけがある。嗚呼、此れこそが神の裁きとでも云うのだろうか。数多の生命を奪い続けた報いなのか。それならば、ひと息に私という『個』をこの世界から削除してしまえばよいものを。生命を踏み躙り続けた私が、新たな生命をこの身に宿すなど、有り得てはならないことだ。赦されざる神の御業だ。
それなのに。

「あなたとアタシの赤ちゃん、絶対可愛いわぁ……!」

こいつの頭の中は花畑なのだろうか。私の上できゃあきゃあとひとり騒ぐアバがおそろしい。自然の摂理を捻じ曲げて生まれて来たからか、この手の状況にも全く動じていない。だいたい、私の子など業の塊もいいところだろうし、親の因果が子に報いという考えを知らんのか。殊生命を生み出すという分野に於いて、アバという人間の生まれは傲慢に満ちているし、私の生まれは言わずもがな罪に塗れている。つまり我々の子が無事に生まれてこられたとしても、碌な人生ではないことが決定付けられているわけだ。というか。

「……ここから先、どうするべきかご存知なのですか」

純粋に好奇心から訊いてみたのだが、ぴたりと、アバが動きを止める。そして徐ろにベッドサイドに置かれている怨み手帳に手を伸ばし、ぱらぱらと頁をめくっていく。

「だ、だいじょうぶ……これに全部メモしてあるから……」

「皮算用も甚だしいな」

「でもでも、今がまさに役に立つときなのだから……無駄ではなかったわ」

そう言ってにこりと微笑むアバがあまりにも幸せそうで、思わず目を背ける。そうしている間にも、アバは怨み手帳を読みあーだのうーだの言っている。そして、その声が止んだと思ったら、胸に、というより胸の先端に刺激が走った。ぴったりとした衣服であることを後悔した。服の上からでも分かる小さな突起を、アバが指先で捏ねている。

「や、やめ……っくすぐったい」

「くすぐったいってことは……もしかして……」

ぢうっと音を立てて、アバはあろうことか私の胸の先端に吸い付いた。唾液に塗れていくソコを舐めたり舌先でつついたりしながら、じわじわと燻っていた下腹の紋章に触れられる。
するとどうだ。たったそれだけのことで、胸のむずがゆさと腹の底の燻りがリンクしたように、心地良いようなもどかしいような感覚が我が身を襲う。
ぢゅくぢゅくと濡れた音が胸元から絶えず聴こえ、聴覚すら犯される。

「も、やめてくださぃ……ッんぁ!あ、我は男だぞっそんなとこ、ろぉ……弄っても無意味だ……あんんっ!」

ぷはっと私の胸を解放し、アバがぼそりと呟く。

「母乳は……さすがにまだか……。でも、パラケルスが気持ちよさそうだから……いっか」

そう言う間にも、くにくにとこちらの胸を捏ねくり回している。

「ん、手を……止めろ、ぉ! きもちよくなんか……ないぃぃい……ッ!」

「もっと素直になっても、いいのよ……? ほら、ココみたいに……ね……?」

えっと、次は……と手帳を覗きながら、アバが私の中心に触れた。びくり、と体が強張る。

「このままでは、苦しいでしょう?……脱がせてあげる」

胸への責め苦から逃れられたと安堵した矢先、ベルトのバックルをカチャリと外す軽い金属音で意識を引き戻された。
私が引き上げるよりも早く、アバが下着ごと私のボトムスをむしり取っていった。ふるんと痛い程に主張している雄が外気に触れて頬に熱が上る。
上半身は胸元が唾液に濡れ下腹部には性的興奮を無理やり引き起こす紋章が、そして下半身は何も纏っていない。生まれたままの姿、というわけではないし、そもそも衣服などかつての私には必要のないものであったのに、今の自分の姿がとてつもなく情けないものであることは自覚できた。
こんな姿、誰にも見せられない。のに、アバは、うっとりと表現できそうな表情で私を見下ろしている。

「素敵よ、パラケルス……とっても可愛くて、とってもえっち。いつもは、きっちりしてるのに……これが……ギャップ萌え……?」

でも、普段着からして割とえっちよね……? 盗られやしないかと気が気じゃないわ……!などとほざきながら、アバは私の雄の先端にちゅっと口付けた。

「はぅ……っ」

そしてその勢いのままぱくりと先端を口に含む。体温の低いアバの口内は、やはり少しひんやりとしている。否、私のソコが、熱を持ちすぎている故にそう感じるのかもしれない。
怨み手帳を片手に、もう片方の手で竿を柔く扱く。舌先でちろちろと先端をくすぐられる。そのたびにびくびくと内腿が震えた。

「ぉ、斧だったなら……んっ、このような弱味を見せるなど!!」

「ひもひいーい?」

「ひ、しゃべらないでくださいぃ……っ!」

じゅぷじゅぷと水音が部屋に響く。身を捩っていやがる様も、快楽に翻弄されないように歯を食いしばって耐える様も、それらの努力も虚しくあられもない声を上げてしまう様も、全て上目遣いのアバに見つめられていると思うと、羞恥と共になにか得体の知れない感覚が背筋をぞくぞくっと上っていくのが判った。
その感覚にも後押しされてか、あっという間に追い詰められる。

「ぁああ! なにか、出てしまいますぅ……ッ!? くち、はなしてぇ……あ、あ、あぁああ!?! やぁだあ、──ゃ、あああッ!!」

とぷっと中心から溢れたナニかを、アバはこくりと飲み下した。荒い呼吸を繰り返しながら、その様子をぼんやりと見守る。

「んっ、おいし……じょうずに射精できたね……パラケルス。いいこ、いいこ」

伸び上がったアバによしよしと頭を撫でられる。通常ならアバの手を軽くはたき落としてそっぽを向くような扱いだ。しかし、ありえないことだが、このとき私の脳内を占めていたのは、圧倒的な多幸感であった。
愛玩されて感じる幸福など、私には不要なものだと思っていたのに、と空恐ろしくなる。私はいったいどうなってしまったのか。

「つぎは……ココね……」

手帳の頁をめくり、アバが私の脚の間に移動した。すべてが把握できてしまう位置で、彼女は微笑う。

「判る……? パラケルスのココ、もう、濡れてる……女の子みたい」

そう言いながら、か細い人差し指で私の、その……あの……こ、肛門を、くるりと撫でた。確かに、拡げられた際に外気にさらされひやりとしたソコは濡れているらしかった。
これでは、これではまるで、犯してほしいと待ち望んでいるようではないか。

「今、パラケルスの体内にある仮の臓器……そこから分泌されてるのかな……?」

考察するように顎に指先を当ててひとり言をこぼすアバを見つめる。彼女は私の視線に気づくと、安心させようとしたのか微笑んでから腹部の紋章に軽い口づけを落とした。下腹が切なくきゅうっとなるのと同時に後ろから体液がとろりとあふれるのがわかり、羞恥から枕に横顔をうずめる。
それをOKサインと受け取ったらしいアバが、後ろに指を這わせてきた。
あまりのことに硬直している私を気遣わしげに見ながら、アバは中指をつぷりと挿し入れた。
いくら自発的に濡れるとはいえ、使用したことのないソコは狭く、アバの指を押し出そうと凄まじいまでの異物感を訴えてくる。

「ゆーっくり、呼吸をして……そう、じょうず。力を抜いて……」

「は、ぁ……ッん゛、くるしい、です」

「ごめんなさい……もう少しできっと見つかるから……待ってて……」

何が見つかるのです?
そう問おうと口を開いた瞬間だった。

「ぅ゛あ゛ぁ゛ッ!?! 」

「よかったぁ……見つけた……!」

アバの指の腹がこりこりと、私の胎内を苛む。
目の前でチカチカと光がはじけて、知性なんかどこかに吹き飛んでしまう勢いだ。
涙でぼやける視界の中、アバが散々私をいじめた指を引き抜いたとほぼ同時に、彼女の中心を私の後ろにぴとりとあてがうのが見えた。やめ、と言うか言わないかのタイミングで、指とは比べものにならない熱と質量が入り込んできた。見開いた目から壊れてしまったかのようにぼろっぼろと涙が溢れて止まらない。

「あ゛ぐッ!い゛だい゛、い゛だい゛ですぅ゛う!!」

「あ、あ……待って、パラケルス……! もう少しで届く、からぁ」

痛みと苦しみしか感じられない挿入の最中に、先程のしこりをアバの中心が掠めた。
痛苦と過ぎたる快楽の中で、私の頭は混乱を極める。最早、私は私でなく、ただ性的な快感を求める浅ましい何かでしかない。

「あぁ、ぁ、んあ、あ、あ、あっ!?」

「パラケルスの胎内……あったかくてとろとろで、でもきゅうきゅうって締め付けてきて……きもちよすぎる……!」

ぱちゅんぱちゅんと肉がぶつかる音が間抜けに聞こえる。時折リズムを変えて打ち付けられると、そのたびに私は悦びにうち震えた。

「きもちいぃ……? ぱらけるす、もっと欲しいの……?」

「もっとぉ、お……! そこ、ごりごり、ごりごりってしてくらさい……ぃ!!」

「はい、あなた! もっともっと、きもちよく……なりましょう?」

「きもちぃいい……ッ!堕ちるぅ!あ、らめッ、これいじょうは……こわいれすぅ……!」

ふわりと抱擁を受ける。より深くなった結合部に私の卑しい声が上がるが、アバは我が子でも抱くようなやさしさで以て私のすべてを受け入れてくれている。その事実を感じ取って、私は快楽からではない涙をひとすじ零した。

「だいじょうぶ……だいじょうぶよ」

「ぅ、……」

「きもちのいいことは、わるいことじゃない……たぶん。だから堕ちるなんて言わなくても……いいの」

「だ、だが……っ」

言い募ろうとすると、アバの腰が打ち付けられてあえぎ声しか出せなくなる。

「ね……孕んで……パラケルス。……おねがい」

「あぁッ、でもぉ……んんあ!」

「アタシの未完成の体より……安定したあなたの体のほうが、安全性が上がる……はず。……ん、もう……出ちゃいそうッ……あっ!」

「ぉ、やめぇ……だめだっ! それだけは……あ、あぁ、あッなにか、クる……っ!? んんん、あ、あぁああああ!!」

今日一で情けない声を上げて、絶頂を迎える。
とぷりとぷりと胎内に注がれる熱い体液を、幸福感の中でふわふわしながら受け止める。
アバがとさりと私の上に倒れ込んできた。赤髪の隙間から翠の瞳がこちらをのぞいている。互いに呼吸が落ち着くまで待つかのような沈黙の後、アバがぽつりと言葉をこぼした。

「アタシにだって、もちろんパラケルスにだって……幸せになる権利はあるはずだし……誰かを幸せにする義務だって持ってるはず」

だから、とそこでひとつ息をついた。

「いっしょにしあわせになろう?」

「まったく、貴女というひとは」

ふふっと花が綻ぶように微笑ったアバに、初めて見惚れた。



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