my fair robot

ロボクロへの今夜のお題は『いつになく真剣 / 無抵抗 / 命令』です。

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中途半端にR18ご注意。

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「別に僕、お人形遊びがしたい訳じゃないんだ」
椅子に腰掛けて作業台に頬杖をつきながら、その上に寝かされたワシを眺め、いつになく真剣な表情と声色で博士は言った。
メンテナンスの為に電源を一度落とされて、起き抜けにこの台詞。
博士の意図が掴めないのは別に今に限ったことではないが、いつも以上に何を伝えたいのかが分からない。だが、そう正直に告げれば、ワシのコイビトであるはずの博士は気落ちしてしまうだろう。ワシに内蔵されたアクティブ・コミュニケーション・プログラムの、人間関係とりわけ恋人同士について記述されている部分には、そのような説明がある。
こういった場合ワシがとるべき行動は何だろうか。
考えあぐねていると、博士が徐に剥き出しのワシの胸部に手のひらを置いた。そして、胸板から首筋にかけてゆっくりと撫で上げ、手を何度も行き来させる。この時、意識していないにもかかわらず、ワシは首を竦める動作をしてしまった。
先程から何かがおかしい。
博士がワシの体に触れるたび、その部分から未知の信号が送られてくるのだ。
元来ワシの体は、壊れるほどの衝撃や炎熱などを受けた時、それを数値に変換して頭脳部分へと送る事はできるが、今触れられている部分から伝達されるのはそういった類のものではない。
背面の作業台の硬質さだけでなく、博士の手のぬるさや、じっとりと湿った感触(感触という言葉をワシが使用することになるとは夢にも思わなかった)、緩く強弱をつけて触れられるその弱々しい刺激を感じ取ることが出来ている。
これは生物で言うところの、所謂「触覚」というものではないだろうか。
そこまで考えが至った時、博士の手の動きが変わった。胸部から首筋に触れていたはずの手は、今はワシの下腹部へと移動している。そして、そこに「無い」はずの刺激を受けて、ワシは思わず悲鳴をあげた。
「ギャァッ!」
ワシの声を聞いて、博士が笑う。
「ふふふっ、色気も何もあったものじゃないねェ」
ようやくいつも通りの博士が戻って来た気がして少しだけ安堵する。だが、博士の言葉には聞き捨てならないものが含まれていた。嫌な予感がする。
「色気トハドウイウツモリダ駄目博士!ッテ、触ッテンジャネェエ!!」
なおもそこに触れようとする手をはたき落とすと、博士はむうっとむくれた。
「抵抗は無意味だよ。だってほら、見てごらん」
仏頂面のまま博士がワシの中心を指差す。そこは信じられない変化を遂げていた。そもそもそこには何も無かったはずなのだが。軽くパニックを起こしているワシをよそに、博士は心底楽しそうに「ソコ」をつんつんとつついてくる。
「どうだい、すごいだろう?与えられた刺激に対して、相応の反応を返してくれるんだ。今は試験段階だから少なめの設定だけど、その際の摩擦回数は完全にランダムでよりリアルにしてあるし、硬度も変えられるんだよ!勃起時の全長はなんとオリジナルと同じなんだ!」
いつの間にオリジナルのサイズを計測していたのだとか気になるところはあったが、無邪気に解説を垂れ流している博士に合点がいった。つまり。
「…分カッタゾ、駄目博士。貴様要スルニ……」
言いながら、起き上がって博士の手首を掴む。そのほんの数瞬、博士の瞳に不安の色が見てとれた。だが、ここまで聞いて離してやるつもりはない。
「ワシノ嫁探シニ協力スル気ニナッタンダナ!!ソウトシカ思エン!」
ワシのこの言葉に、博士は目を瞬かせた後、にっこりと凄絶な笑みを浮かべた。
「……違うよ。分からない?僕たちって一応恋愛関係にあるんだよね?」
そう言うと、博士は「よっこいせ」と言いながら作業台の上にのぼり、ついでとばかりにコートの裾を捌いてワシの上に跨がった。
あまりの事に失念しかけていた事実を突きつけられ、ワシは少なからずショックを受けた。そうだ、ワシと博士はコイビトなのだ。嫁にかまけてコイビトを落ち込ませて、何のためのアクティブ・コミュニケーション・プログラムだ。自分の軽率さに怒りすら湧いた。
こういう時の相手の反応は、概ね決まっているとプログラムには書かれている。非常に悲しむか、あるいは。
「今から絶対に動いちゃ駄目だからね。…これは命令だよ」
物凄く怒るか、だ。凄みのある低い声が研究室に響いた。
この言葉自体に拘束力は無いはずだが、ワシの身体はギシリと音をたてんばかりに固まってしまった。
今から博士が行おうとしているであろう行為について、全く知識が無いわけではない。だが。いや、だからこそ、信じられない思いで呆然と博士を見つめる。あの博士が。あの「研究以外はどうでもいいよ♪」などと言って憚らない駄目博士が、まさか。
カチャカチャとあちこちに付いたベルトを外す音をセンサが捉える。ハッとしていつの間にか逸していた目線を上げると、いつもの作業用前掛け(ついでにいつの間にかズボン等も)を脱ぎ去って、あのフレアコートとインナーのみになった博士が視界に飛び込んできた。この時点で見なきゃよかったと思った。想定よりも衝撃が大きい。何も身に纏っていない博士は何度も見たことはある。その辺で急に寝入ってしまった博士にシャワーを浴びせて、仮眠室まで運んでやるのもワシの務めだからだ。だが、こういう含みを持たせて肌を晒す博士は当然ながら初めてだった。
博士が懐から何かを取り出す。手のひらサイズのそれは、粘性の高い液体が入ったボトルだった。かちりと軽快な音をたててボトルの蓋を開け、惜しげも無く素手に落としていく。
「これは潤滑油となるもので、同じものが、君のココにも入れてあるんだよ。刺激を受けると所謂先走りとして滲み出るようになってるんだ」
説明しながら柔らかくワシの先端を撫でると、そのまま液体まみれの右手を自らの股座に入れ、後ろに指を突き入れた。
「…ん゛んッ!」
思い切り過ぎな行動と苦しげな声音に思わず、びくりと博士に手を伸ばしかける。だが、その動きもこちらを睨めつける博士の視線によって制されてしまった。
「…動いちゃ駄目だって、言っただろう?… ッは、痛いなぁ…何してるんだろう、僕」
珍しく自嘲気味に笑みながら、それでも指を抜こうとはしない。暫くの間その状態から動きはなかった。ワシの胸に左手のひらをひたりと置いて項垂れたままの博士にどうしたらいいのか分からず、見守る事しかできないのがもどかしくて仕方がない。
「オ、オイ、駄目博士…平気カ?」
「…ん、平気。やっと慣れてきた…」
そう言うと、今度はぐりぐりと指を動かし始めた。抜いては挿しを繰り返し、その動きは次第に性急なものになっていく。くちゅくちゅと水音が聞こえ出した頃、博士は自らの後孔に挿入する指を二本に増やした。
「っふ、予想していたより、苦しくないなァ。これなら…」
些か急ぎ過ぎだろうと思えるような、博士らしく無い判断で指は三本に増やされる。何もできずに見守っていると、博士の指の動きが何かを探るようなものである事に気がついた。
「んー、この辺りのはず、なんだけど…ぉッ!?」
余裕そうだった博士の声音が一気に張り詰め語尾が跳ねた。何事かと思いスキャンしてみると、博士の中指がある一点、すなわち前立腺をとらえているようだった。
そのまま立て続けに前立腺を刺激し、ひっきりなしに悲鳴じみた声を上げる博士を見ていられなくてアイセンサをオフにしようかと逡巡していると、くちゅりと水音が途絶えた。博士がワシの体の上にしなだれ掛かり、艶然と微笑む。
「お待たせ、ロボ…うんと気持ちよくなろうね…」
「ヒッ、ァ、駄目ダッ博士!コレ以上ハ…!」
突然中心を撫であげられて、音声が情け無くひっくり返る。
ワシの拒絶を見、博士はより一層笑みを深めると、ワシの中心を自らの後孔にあてがった。そして、ゆっくりと腰を落としていく。
「アァッ、駄目、駄目駄目ェッ!ンァア!」
「っふぅ…入っちゃったねェ。どう、気分は?」
気分も何もない。博士の初めて見る一面に戸惑っているうちに、自らの生みの親を犯してしまった。最悪の気分だ。だが、ワシの頬を包み込む博士の両手がどうしようもなくあたたかくて、何故か泣きたくなった。
「………泣キタイ」
「いいねェ!そういう君の色んな感情を見せてよ」
嬉々としてワシを見つめるのは、親でもコイビトでもない、実験者の目だ。改めて気付かされたが、博士は人格破綻者なのだった。息子同然の存在に犯されても態度を崩さず、喜んでさえいるのだ。これが尋常なことではない事くらい、ロボットのワシでも判るというのに。なんだか、無性に腹が立ってきた。こんな輩を気遣って何になる?
「……イイダロウ、駄目博士。相手ヲシテヤル」
「そもそも君に拒否権なんてないよ?これは命令なんだから…、んぁああッ!?」
いつの間にか呪縛が解けていたらしい両手で博士の柳腰を掴むと、一息に中心を抜き去ってやる。そしてそのまま一気に突き立てる。その時にあの場所を掠めてやれば、博士の矯声が裏返った。
「だめ、だってぇ…っぁあ!あ、うごかないでッ…ゆうこときいてってばぁ!」
「ワシノ色ンナ面ガ見タイノダロウ」
機械的な律動も可能だが、あえて不規則な動作を選択する。ワシの動きに翻弄される博士を見て、ほんの少しだけ溜飲が下がった。
「ロボ、ロボ…おこってるの…?」
「…当タリ前ダロウ」
「ッすごい、うれしぃい…!」
「ハァ?」
博士が感極まったようにワシに抱きついてくる。切実に理解できなくて戸惑う。すると、ワシの肩口に顔を寄せた博士がぐすっと洟を鳴らすのが聞こえてきた。少し遅れて肩が濡れる感触。これも今まで感じ得なかったものだ。
さっきからこの男はひとり百面相している気がする。よく分からないが取りあえず律動を緩めてみると、博士が身を起こしてこちらを見つめてきた。思った通り、その目からはほろほろと涙が零れている。泣いているところなど初めて見た。
「ッはぁ、ぁ…ロボ…きみは、ホンモノだよ、ね…っ?」
「博士…?」
いつもとは別ベクトルで普通ではない博士の様子に、不安になってくる。大丈夫なのだろうか、この男は。
「ぼく…んん、ひとりなんて、ぇ、…やだよぉ」
ここに至って、ようやく博士の意図が少しだけ理解できた、気がした。
「……アァ、ワシハ本物ダ。博士ハ独リナンカデハナイゾ!」
そう言って、壊してしまわない程度に力を込めて抱きしめる。安心したように全身をあずけてくることに、胸のエンジンがきゅうんと音を立てたのは気のせいではないだろう。

ピロートーク的な余り文
「き、君のココロが仮に、バグじゃなくて本物なら…その、そういう関係になるのも有りかなって…」
なるほど。それで冒頭の台詞か。
「僕だっていろいろ勉強したんだよ?医学的な知識だけじゃ補えないところもあったりしてさ」
「デ、ソノ勉強トヤラハ役ニ立ッタノカ?」
「ある程度はね。でも思ってた以上に…よかった、かも」

「君の情緒の成長を確かめるには最適の手段だと思ったんだよ。だから、君に新たな機能を実装してみたんだ」
「ジャア、最中ニ貴様ヲ見テ胸トカガ疼イタノモ、ソウイウ設定ガナサレテイタカラナノダナ!」
「そんな回路は造ってないけどなァ…」
「イイカラ寝ルゾ!」
都合の悪い呟きは気にしないふりをして、博士を腕の中に閉じ込めると、スリープモードへと移行する事にした。

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