In childhood

おやのしごとの都合、とかいうやつで、きょうオレはまかいの西がわ?にやってきていた。とうちゃんとかあちゃんがしごとに行ってるあいだ、オレはホテルの近くの公園にあそびにでかけた。 ジャングルジムのてっぺんにのぼって仁王立ち、ついでにワルっぽく高笑いしていると下がさわがしくなった。なんだよ、気分よくノリノリだったのに。オレのじゃまをするやつはぶっとばす!
そう思いながらジャングルジムから飛び下りる、もちろんカッコいいポーズをキメながらだ。
ストンと華麗に着地をしてまんぞくしていると、めのまえに何体かのこども達がいるのに気づいた。三体のこどもはオレと同い年くらいで、のこりの一体はオレよりも三つくらい年下に見えた。三体のこども達はオレの方をみて、バツが悪そうに目を逸らす。ちいさい方は泣きじゃくりながらからだを丸めている。
オレの天才的ずのうはピコンとひらめいた。
『助けなきゃ!』と。

「ゾニスッ!!」

大きい方の三体めがけてじゅつを撃つ。
とうちゃんには『むやみやたらと使ってはいけない』と言われていたけど、いまこそ使うべき時だと思った。
三体はひめいをあげて逃げていく。それを見ながらニヤリと口をにやけさせていると、服のすそをちょいちょいと引かれているのに気づく。ふりむいて見ると、丸くなっていたはずののこりの一体がオレを見上げていた。
そいつのなみだで濡れたかおをまじまじと見つめて、オレは言った。

「おまえ、かわいいな」

「、えと。ありがとう?」

ことりと三日月あたまをかしげて、そいつがお礼をしてきたのでオレはちょっとびっくりした。てっきりオレより年下だからまだしゃべれないと思っていた。

「それ、どっちのイミだ?」

「?」

「ありがとう、って、何に?」

「あ、たすけてくれたのと。か、かわいいって言ってくれたこと」

『えへへ……』と照れ笑いをうかべるそいつがかわいくて思わずみとれる。
そいつのレモン色のガラスみたいな目に映りこんだオレは、カッコよくキメるどころじゃないかおをしていた。ほっぺたは真っ赤だし口はぽかんとひらいていて、そいつに『? だいじょうぶ?』としんぱいされてしまうくらいかたまっていた。

「ぉ、おまえ、なまえ何てぇの」

「ん、キース。きみは?」

「バリー!」

「ふふ。よろしく、バリーくん」

ふわりとわらったかおが好きだと思った。すこしほっぺたを赤くして、照れたみたいにはにかんで。

「きめた! おまえをオレのおよめさんにする!」

「え? えぇ〜!?」

ぼく、おとこのこだよ!?
そうさけぶように言われても、オレのこころはもう決まっていた。かあちゃんが言ってた、『愛におとこもおんなもカンケーない』って。
それに、キースもなんだかんだ言ってすごくうれしそうだ。

「おとうさんとおかあさんに訊いてみないと……!」

行くか、ケッコンのゴアイサツ。
決心をかためていると、キースがオレの手を握ってきた。体中に嬉しさがめぐって、ツノのてっぺんからつま先までびりびりとしびれたみたいになる。きっとこいつはオレの『うんめいのひと』ってやつだ。そうじゃなきゃこうはならねぇ。
キースの服とか話し方的に、いいとこのぼっちゃんかもしれないから、ゴリョウシンはおごそか? って感じかもな。よし、気合い入れねぇと。

「ねぇ、ぼくとこれからもずっといっしょにいてくれるの? ケッコンってそういうことだよね?」

あ。

「やべっ!オレきょうしかここにいねぇわ!」

「そんなぁ……」

うるっとなるキースをなんとか安心させたくて、オレはとっさに言った。

「だいじょうぶ!オレ、おまえのことぜってぇ忘れねぇから!」

「ほんとうに?」

「おう。もっともっと強くなっておまえをまもれるようになって帰ってくる!」

「ぼくも、もうすこし強くなってバリーくんを待ってる。きみにたよりすぎてしまわないように」

どんどんたよってくれて良いんだけどなぁ。と思いつつ、キースの決断におとこらしさを感じて応援もしたくなった。

「よし、じゃあ戦いのきそをおしえてやるよ。自分の身は自分でまもっていけるくらいには」

「ありがとう、バリーくん!」

「だからオレのことも覚えといてくれよな、キース?」

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『無敵の子』と呼ばれて久しいキースに再会するのは、この出逢いの約十年後のことである。

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