sweet lilly

女体化注意です。

「またそんなに胸出して。恥じらいというものが無いのか?」

「今どき常時ブルマ履いてるこに言われたくない」

くびれとは無縁のウエストに手を当てて、キースがあたしの服装にケチをつけてくる。いつものやり取り。キースは毎日飽きもせずにふっかけてくるので、あたしも面倒ではあるけど言い返すようにはしている。言われっぱなしはムカつくし。それに別に常日頃から制服で過ごせっていう校則はないのだから、私服は好きにさせてほしい。
体育がたるかったから空き教室でひとり極甘口のデザートワインを開けようと思っていたのに、出鼻をくじかれた感じ。何が気に入らないのか知らないけれど、転校初日からこの子はあたしを目の敵にしてくる。……まあ、売られたけんかを買ってしまったのがいけなかったんだろうな、と薄々思ってはいるんだけどね。
あれ以来何かとライバル視してくるキースは、棒付きキャンディを咥えたままあたしのそばに椅子を引っ張ってきた。そして背凭れに腕とあごを乗せるような態勢であたしをじっと見つめてくる。
その視線にさらされながら、ボトルを手に取りワインオープナーどこやったっけときょろきょろしてみる。それをつまらなそうに眺めていたキースが、「ねぇ、」と声を発した。

「いつもワイン飲んでるけどさ、そんなに美味しいわけ?」

当たり前じゃん、とはあえて言わなかった。だって当たり前だから。今しがた開けたボトルを見せて、言外に「飲む?」と訊いてみた。キースは首をふるふると横に振って、棒付きキャンディを口の中で転がす。かろん、と軽い音がした。
あたしは甘いものが好き。だから渋いワインに当たったときはすごくがっかりする。キースは常にキャンディを咥えてるけど、甘いのはそんなに得意じゃないらしいというのは本人の談だ。
デザートワインをひとくち含んで、キースを見る。こちらの視線を無視して、退屈そうに窓の外のグラウンドを眺めているキースのあごに指を添えてこちらを向かせた。なすがままになっている無防備なその唇を見つめる。

「美味しくないのにキャンディ舐めてるの、何で?」

キースはぱちくりと瞬いた。硝子めいたその目に、あたしの顔が映り込んでいる。少しだけこわばった表情をしている自分が滑稽に思えた。あたしのこの緊張を知ってか知らずか、キースは相変わらず黙ってきょとんとした表情のままでいる。
徐にキースの口からキャンディを引き抜いた。ちゅぽんと間の抜けた様な、でも可愛いような音がして、そこに至ってようやくキースが口を開いた。

「んー……分かんない。バリーはどうしてだと思う?」

質問を質問で返されて、数秒ほど考えを巡らす。この際答えなんてどうでも良かったけど、咄嗟に口をついて出たのは。

「口寂しいから、とか?」

あたしの言葉を聞いたキースが小首をかしげた。その角度、その表情が、今のあたしに都合よく解釈させる。
あごに添えた指をそのままに、キースの意外とぽってりした唇に自分のを重ねた。その下唇を舐めてみると、何か言おうとしたのかキースが口を開きかける。その瞬間を逃さないように、勢いよく噛みつく。さっきまでキャンディが居座ってただけあって、キースの口内は頭がとろけるような甘さを残していた。散々貪って、縮こまっているキースの舌を吸って甘く噛んで、ほっぺたの内側を舐めあげる。甘ったるい唾液をこくりと飲み込んでから、キースを解放する。そして一言。

「甘くて美味しい」

「ワインの渋みが移ったじゃんか」

ぷんすかとほっぺたをふくらませてるけど、目元を赤らめているキースの声音は満更でもなさそうに聴こえて、なんだか嬉しくなった。

「今度からさ、口寂しくなったらちゅうしよう」

キャンディじゃなくて、あたしを必要として。
とは口に出さず、キースの出方をうかがう。そうしたら、キースはぽそぽそと唇をとがらせて言った。

「キャンディ舐めないと、バリーにはメリットない、よ」

そう言い終わるか終わらないかのタイミングで、キースにもう一度口づけてみる。さっきのキスでキャンディの甘さはぜんぶ舐め取ったと思っていたけど、何故かキースの口内は相変わらず甘くて。

「うん。やっぱり美味しい」

「そ、それって……!」とキースが顔を真っ赤にしている。このこ案外可愛いのかも、とこのときようやく気がついた。

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