お題:なんだ、答えはここにあった

浦+キルへのお題は『なんだ、答えはここにあった』です。
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↑お題元さまはこちらです。

素敵すぎるお題からズレまくりました。ちょっと陛キル要素含みます。
意味不文ではありますが、いつもどおり萌と滾りは込めました。
自分の中の浦+キルはいつもこんな感じです。でももっと、もっとこうなんか……退廃的な雰囲気のはずなんすよ。こんなんになってしまいましたが……。ごめんよ。

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「失礼しますよ、っとぉ」

そう一言告げて、横臥する彼の身体を仰向けにする。以前はこの作業も一苦労したものだったが、今はそうでもなくすんなりと行えてしまう。
目に見えるほどの体重減少。きちんとバランスを考えて三食用意はするのだが、殆ど食べてはもらえず。仕方なく栄養剤を与えている。

「今日もほぼお元気ッスねェ。あとは食事さえ摂っていただければ御の字なんスけど」

言いながら記録用紙に必要事項を記入し、ちろりと視線を彼に向ける。彼──キルゲ・オピーと名乗った滅却師だったモノ──は、こちらを見つめているようなそうでもないような、曖昧模糊とした目つきで視線を返してくる。
あの戦いの後、滅却師研究のためと銘打ち、彼の体を切り刻んだ。
その彼を何故生かしたのかは、正直なところアタシ自身にもよくわからない。
わからないものはおそろしい。だから周囲の反対も押し切って、このよくわからない感覚の正体を掴むため、彼を今のような状態に置いている。
大きく二つに分かたれていた体を縫い合わせ、アタシが付けた多種多様な傷口を塞ぎ。そうすれば、ほら、元通り。……とはいかなかったようだ。その証拠に、彼は生前の性質をほぼ全て喪っている。言葉もあまり発しないし、アタシに与えられる色々な刺激にも殆ど反応を示さない。
傷跡はあえて残した。そのほうが何やら好ましいと思えたから。だから彼の体には彼を死に至らしめた大きな傷の他にも、生前に鍛錬やらで付いたのであろう大小様々な傷跡まで残っている。
それらのうちの一つ、彼の体に刻まれた最も大きな傷跡を人差し指でなぞってみる。途端、ひくりと体を強張らせる彼を見て、自分の口元が歪な笑みを形作るのが分かった。
何度も何度も、何度も何度も何度も。
執拗に傷跡に指を這わせ、時折縫い合わされた部分の凹凸に爪を立てる。そうすれば。

「あはは、アナタやっぱり被虐性愛者の素質、あるんじゃないスか?」

だって、ほら。ねェ?
そう言って顔を覗き込めば、何も見たくないとでも言うようにぎゅっと両眼を瞑られる。まあそれも良いでしょう、と思いつつ、傷跡を撫でる手は止めない。
あの一撃で消し飛んだ彼の中心、彼の陽物は、アタシが態々培養し移植して差し上げた特別製。ソコが僅かに兆しているのは、紛れもなくアタシの手によるものだ。
いつも思うが、破面の皆サンに対してあれだけの苛烈な攻撃を行っていた彼に、加虐趣味があるのは確かなのだろう。だがそれはあくまでも滅却師という種族ゆえの憎悪から来るものであって、彼自身の本当の性質はその逆にあるようだ。

「……へいか、あさましいわたくしめを……どうか、どうか」

おゆるしください。
こうなったとき、いつも彼が口走る文字の羅列。そう覚え込ませた人形が、ただ記憶させられた言葉を繰り返すように。その言葉は彼の裡から溢れ出すのだ。

「……あのヒト、随分イイご趣味だったようで」

自分のことを棚に上げてそんな感想を洩らす。
彼が陛下と呼ぶ人物はもうこの世界に存在しない。
それでも、彼は涙すら流しながらかつての君主に許しを請う。そんな姿にアタシは、この上ない憐憫と、苛立ちを覚えるのだ。
だからアタシは、彼の耳元に口唇を寄せ、甘く囁いてやる。

「イイんスよ、触れても。だぁれも、アナタを叱ったりしやしません」

空いている方の手で、彼の手を中心に持っていく。ゆるゆると緩慢な動作で、彼が中心を扱き出す。生前余程ソコに触れることに抵抗があったのか、幾度も謝罪を繰り返しながら、それでもアタシの甘言にのせられる彼は、本人の言葉を借りるなら、浅ましいのだろう。
だが、アタシはこの彼を好ましく思う。
禁欲的な生前の姿の裏に、こんな本性があったのなら。それはとても魅惑的だ。
よく躾けられた忠犬を横から掻っ攫って徐々に自分色に染めていく。アタシはこの工程に、この上ない悦びを感じる。
だが、最後の工程が、まだ残っている。
彼を塗り替えていく過程でもっと早い段階で染める筈だった認識。主人はアタシであるという躾。
それが叶っていない。
何故彼を生かしたのか。その答えがわからないと、思っていた。きっとそれは、至極単純で明快な理由。
時間をかけ、やっとのことで達した彼が、恐る恐る目を開く。その涙に濡れた碧色の瞳には、アタシの案外不安そうな顔が映り込んでいた。
彼が口を開く。

「……ぁ、貴方は……?」

アタシの体が、歓喜に打ち震える。
なぁんだ、答えはここにあったんスねェ。

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